覇王ときどき革命

中国・清末民初のお話など

2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

白い戦場

泥の濁りがまじった雪原の道路わきから、同じように薄汚れた白い子犬が、じっとこちらを見ていた。二つの目は、黒真珠のごとく濡れて動かない。 厳寒の季節、遼寧省新民市の郊外、巨流河という村を訪れた。付近を流れる遼河は、かつて、村と同じ雄大な名前で…

密偵・呉佩孚

1900年、義和団の乱が、清軍と八か国連合軍との戦争に発展した。天津・大沽砲台にいた26歳の下士官・呉佩孚の戦いについて、伝記はこう記す。 「大隊長以下はみな退却し、一人で砲台を守った。外敵の嘲りに憤り、三発射ち、すべて命中させた」 だが、…

最も暗黒なる一日

1926年4月20日に、段祺瑞が側近らとともに北京を去ったことは、先に書いた。 そのひと月前、3月18日の話をしておきたい。 * * 北京の春は、強風と砂塵の季節である。ただ、その日は曇りで、時折、小雪が舞っていたという。 段祺瑞の執政府は、故…

その手にあるのは、近代

論語や春秋といった四書五経をそらんじ、詩文をよくする。「忠」とか「仁」とかの概念について果てしなく語れる。科挙を勝ち上がるトップエリートもいれば、なぜか竹林に隠れて賢人と呼ばれる者もいる。中国古来の知識人の大雑把なイメージだ。 中国が嵐の中…

北京発最終列車

夕刻が迫る華北平原を、北京発の特別列車が、東に、天津に向けて、ゆっくりと走っている。 1926年4月20日のことだ。列車には、北京を追われた段祺瑞一行が乗っていた。段がこの先、復権することはない。最後の旅で見せた「北洋の虎」の涙は、「覇王と…