覇王ときどき革命

中国・清末民初のお話など

2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧

日月輝く国

1922年6月16日、孫文が広州から追放された。陳炯明(ちん・けいめい)麾下の軍が、未明から観音山の総統府を砲撃し、圧倒的な兵力をもって、そこの主人である革命家を追い出したのだ。 孫文と陳炯明の路線対立については、「覇王と革命」で書いた。こ…

海の逃亡者

1894年9月17日、日清両国の主力艦隊が黄海で遭遇、火炎と黒煙がたちまち午後の海を覆った。 丁汝昌率いる北洋艦隊の主力戦艦・定遠、鎮遠は、豪雨のごとき砲撃に耐えて反撃した。砲弾を撃ち尽くした巡洋艦・致遠は、日本の巡洋艦・吉野めがけて体当た…

少年と舟

少年は舟を曳いた。 暴れ川の氾濫によって泥田のようになった秋の大地で、いとこと二人、縄で結わえた粗末な舟を曳いた。 正確にいえば、それは舟ではない。一人乗りの木箱、棺だ。自宅近くの平地に置かれていたこの棺は、土饅頭もろとも水に流され、立ち木…

飛べない悟空

古い肖像写真の穏やかな顔は、グレーの色調の中で深い憂いをたたえているように見える。「中国革命の父」と称される孫文だ。その一般的なイメージは、「革命いまだ成功せず」(中国語原文は、「革命尚未成功」)という遺言に見果てぬ夢を託した、高潔、慈愛…